2010/08/10

[書籍紹介]新しい労働社会 岩波新書2009.07

2010年8月10日発行「Works」に掲載された書評(と言いますか、研究者の愛読書紹介コーナー?のようなものです)を 再掲いたします。



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 著者の濱口桂一郎氏は、昨今の雇用・労働問題を考えるには、現在の諸問題からやや身を引いて、日本の労働社会のありよう(=日本型雇用システム)の根源に立ち返ってみる必要があると言います。著者によれば、日本型雇用の特徴としてよく挙げられる長期雇用・年功賃金・企業別組合のいわゆる「三種の神器」は、日本型雇用システムの本質ではなく、真に重要なのは、従業員と企業が「職務(ジョブ)」を明確にしないまま雇用契約を結ぶこと、すなわち契約の中身がジョブではなく「メンバーシップ」であることなのです。

 雇用の本質がメンバーシップ契約なのだという前提に立つと、三種の神器をはじめとする日本企業の雇用慣行の数々が、システムに合致した非常に合理的な施策群であったことが理解できるわけですが、本書ではその論理がみごとに描き出されています。借り物の成果主義や職務給制度がいまひとつうまく機能しなかった理由にも、合点がいくようになるでしょう。

 しかし、頑健だった日本型雇用システムは、ここにきて大きな変化にさらされています。たとえば、現在の企業の構成員にはメンバーシップで雇用される正社員だけでなく、ジョブで雇用される非正規労働者も含まれます。ぜひ本書を手に取って、異なる前提で働く多様な人々を内包できる雇用システムとはどのようなものであるべきか、考えていただきたいと思います。
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